さてメディアやSNSでは「子連れ出勤」の是非について盛り上がりを見せています。私は子どもがいないので実際に子どもを職場に連れて行くという観点からはあまりお話はできません。なので今日は子連れ出勤をしている同僚と一緒に働く側の視点で「子連れ出勤」について考えてみたいと思います。






私がこれまで働いてきた海外の職場は
子連れ出勤に寛容でした
なので職場にはよく子どもがいました
例えば



子どもが好きだし
あまり気にならならなかったから

でも今、冷静になって考えてみたら
それは多分私に実害がなかったから


子どもは大好きだけれど、そして
子育てを頑張る皆さんを応援したいけれど
それとこれとは別
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私がフランスやアメリカで働いていた職場はとてもリベラルで女性が多いこともあり職場に子どもがいることにはとても理解がありました。
もちろん日常的に子連れ出勤があったわけではありませんが、残業時や学校が平日にお休みになる日、また何か事情があった時には子連れ出勤が普通に行われていました。
また私には子どもがいませんが、若い頃から子どもがとても好きだったこともあって、子連れ出勤をしてくる同僚を不快に思ったことはありませんでした。
さてこのような背景を持った私が同僚たちの子連れ出勤を見ていて思ったことを書いてみたいと思います。
またこれは私のとても限られた経験からだけの思いなので、全く違う環境では全く違う意見があるのではないかと思います。
私が経験した子連れ出勤の様子
一日中子どもと一緒にいて仕事は無理
私の職場は全員が一日の大部分をコンピュータの前に座って作業をしているか、ミーティングを行なっているかという職場でした。
幼稚園へ通うくらいの就学前の子どもたちが職場に来たことが何度かあり、課の同僚は子どもを暖かく迎えその親に理解を示していました。
その日、母親には緊急の仕事や課外の会議などがあり子どものそばにずっとついていることができず、結局子どもは私たちの課の秘書に預けられました。
子どもを育てたことのある秘書は仕事の合間にお絵かきなどをして子どもを飽きさせない努力をしていましたが、その間秘書としての仕事は滞りました。
しかし毎日のことではないので、課のみんなはその日、秘書が100%機能していないことを受け入れて仕事をしました。
この様子をみていて思ったのは母親にしても秘書にしても一日中子どもと一緒にいて面倒を見ることは難しいということ。
もちろん職種の違いやその時の仕事の状況によっても違うと思うのですが、ただ単純に子どもを職場に連れていけばいいというものではないということです。
では面倒を見れない時間、子どもたちはどこにいて何をしていればいいのでしょう? これを考えないで子連れ出勤をすると大変だと思います。
同僚全員の理解がないと難しい
先ほどの例をそのまま使えば、秘書が親切で緊急案件が入って困っている同僚をみかねて子どもの面倒をみてくれました。
また課のみんなも状況を理解して秘書が自分達の仕事のサポートをいつものようにできないことを受け入れました。
これはみんなの協力がないと成り立ちません。さらにみんなは理解を示しましたが、それはその日だけのことと思ったから。
これが毎日続くとなるとみんなの我慢がどこまで持つかはわかりません。
さらに子どもの年齢も大きく影響すると思います。乳児を連れてミーティングに参加することはそれほど難しくないように思います。
けれどいろんなことに興味があり歩き回る幼児と一緒のミーティングは大変だと思います。
私は小学校低学年の子どもを連れた同僚と一緒の課のミーティングの経験があります。課の週一回の定期ミーティングはみんな知った仲なのでとてもリラックスしたカジュアルなものです。
子どもも小学校低学年ということで、椅子にきっちり座ってお絵かきをすることができました。
それでもたまにはお母さんに話しかけますし、子どもがいるということで気が散ってしまうことも事実です。
それでもこのようなミーティングが可能だったのは、当時の課長が課のメンバーの「子育て」にとても協力的だったのと、おそらく同僚みんなこの「子連れミーティング」に反対していなかったからだと思います。
このような状況から考えてみても全ての同僚の理解がないと「職場に子どもがいる状況」の実現は難しいのではないかなと思います。
個室がある職場は良し悪し
他の同僚の迷惑になりにくい
私たちの職場は基本的には個室、もしくはパーテーションで個人のスペースが確保できていました。
このような場合、ある意味で子連れ出勤はしやすいのではないかと思います。というのも他の職員の迷惑になりにくいので同僚からの理解も得られやすいと思います。
また親も子どももあまり周りの目を気にすることもないので、1日をのびのびと過ごすこともできるかとも思います。
何かあった時に子どもを守れない
しかし個室の短所は密室になってしまうこと。私は何度か同僚の部屋を訪れて開けてみて初めて子どもがいることに気が付いたことがあります。
親が子どもを残してトイレに行くことがあるのかもしれませんし、万が一火事など何かが起こった時に「子どもがいる」という情報を共有できていないのは危険なのではないかと思うのですがどうでしょう。
さらに自分のことを考えてみても仕事中は色々なストレスにさらされています。このような状況で子どもと向き合わないといけないというのは、親にも子どもにも精神衛生上悪いこともあるのではないかと個人的には思います。
さらに親がどうしても外せないミーティングがあった際など誰か同僚に「ちょっとだけみていて」ということになるかもしれません。
資格を持っていない人物に密室で子どもを預け、そのことが課内で情報として共有されていないことは、万が一のことを考えると怖いと思うのは私だけでしょうか。
職場で特定の人の負担が多くなるかも
最初に書いたように一日中、子どもの面倒をみながら仕事をするのは難しいように思います。
ということは緊急の仕事があったり外部とのミーティングがある時には、課内の誰かに面倒をみてもらわないといけません。
その際に課内で子どもの扱いに慣れている人、職級が低い人、若い女性など、ターゲットにされやすい方に子どもの世話の負担がかかってくるように思います。
男性職員が連れてきた子どもを職場で女性が面倒を見るなんてことになれば「子連れ出勤」の意義さえ訳がわからなくなってしまうのではないでしょうか。
子連れ出勤を実現するために必要なこと
子どもがいない男性・女性の理解が必要
自分自身のこれまでの経験から考えてみても周りの同僚全員の理解がなければ子どもと職場で共存することは難しいと思います。
再度繰り返しますが職場というのはストレスの原因になるものがたくさんあって、普段温厚で優しく他人のことを思いやることのできる人も仕事の状況ではどのような精神状態になるかわかりません。
最初から子どものいる職場に理解があり子連れ出勤に賛成な方なら「子どもがいる煩わしさ」に寛容になれても、最初から子連れ出勤に批判的な方に寛容になれというのは難しいことではないかと思います。
また子どものいない方々は私を含めて子育ての大変さを実感としてわかっていないかもしれません。そうすると言葉だけ聞いていると「職場で子どもと共存」することは「楽勝」「賛成」と思っているかもしれませんが、実際に子どもたちがやてくると困惑するかもしれません。
また子どものいない方々は私を含めて子育ての大変さを実感としてわかっていないかもしれません。そうすると言葉だけ聞いていると「職場で子どもと共存」することは「楽勝」「賛成」と思っているかもしれませんが、実際に子どもたちがやてくると困惑するかもしれません。
また子どもを持たないことをあえて選んだ方や子どもが欲しかったけれど持つことができなかった方もいます。
もちろんそんな方々でも子連れの同僚に協力的な方もいます。しかし子どもが職場にいることに苦痛を感じる方もいらっしゃるでしょう。そんな方々に「協力」を求めるのは難しいと思います。
このような状況で子連れ出勤を推進するならば、職場全体の理解を得るためにも時間をかけたしっかりとした話し合いが必要だと思います。
あまり考えなしに導入してしまうと職場が大混乱しいさかいも増えるのではないでしょうか。
必ず子どもに目を配る人が必要
小さな子どもたちは予想外の動きをします。さらに職場には触ったら危ないもの、触って欲しくないものが山ほどあります。
また自宅のように子どもが慣れている住環境でもありません。
さらに子どもを連れてきたお父さん、お母さんも仕事で注意がそちらに取られますし、子どもも大人の注意を引くためにいろいろなことをします。
こんな状況で職場での子どもとの共存を考えるならば、子どもの安全を考えても、いつも子どもに目を配る人が必要だと思うのは自然なことのように思います。
職場内に保育園があるのが理想的だと思いますが、会社がケアスペースを決めてシッターさんを雇うなどする必要があるのではないでしょうか。
子ども視点での議論が必要
最後にもう一つ強く思うのが子どもは一日中、親の働く職場にいて楽しいのでしょうか。
これまで見てきた子連れ出勤、ほぼ100%子どもたちは退屈していました。
また同僚に遊んでもらっていた子どもたちも、特別なスペースがあるわけではないので、結局個室のみんなが土足で歩き回る汚い床にそのまま座ってお絵かきしていました。
色々な基準を満たし規則をもうけ資格を持った先生が子どもたちと時間を過ごす保育園とは全く異なった環境がそこにはあります。
1日だけ例外的になら子どもたちも親の働く場所を見ることができていいのかもしれませんが、これが毎日続くとなると子どもがかわいそうと思うのは私だけでしょうか。
職場での保育スペースとルールづくりを
さて、では私は子連れ出勤に反対なのでしょうか。本心は「いいえ、賛成です」と言いたいのです。ただし、それは職場にきちんとした保育園やシッターさんのいる託児・保育スペースがあるならという条件付きです。
きちんとした託児スペースもなく社内での明確なルールもないのに子連れ出勤を始めると大混乱しか想像できません。
しかし社内で明確にルールを決めて子どもにも安全で親も安心できる社内託児所を設置するなら、そしてそのような動きに政府が助成金を出すなら試してみてもいいのではと思います。
というのも実際に私は社内に託児所があった職場で働いていたことがあり、その託児所を利用している同僚の満足度がとても高かったから。
急な残業があったり子どもが病気になった時に同じ建物内に託児所があると側からみていてもとても便利そうでした。
ただこれはフランスでのお話。日本の満員電車などの通勤事情を考えると日本での実施にはまだまだ大変なこともあるのでしょうが。
また社内に託児所を作るにしてもしっかりとしたシッターさんや先生が必要な状況は変わりません。
保育園や幼稚園での先生不足や低賃金問題を考えると、結局の根本的問題は解決していないように感じるのは私だけでしょうか。
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いろいろと書いてきましたが、最後にこの子連れ出勤推奨の際の少子化担当大臣の「赤ちゃんはお母さんと一緒にいるのが何より大切」発言
違和感を感じるのは私だけではないはずです。
「赤ちゃんは愛情を持って自分の世話をきちんとしてくれる人と一緒にいるのが何より大切」なのではないのでしょうか。
職場で仕事の対応と赤ちゃんのお世話にもまれていっぱいいっぱいで、子連れ出勤に理解のない方への対応も大変で、いろいろとストレスを抱えてしまうかもしれないお母さんと一緒にいることが、赤ちゃんにとって大切なのかと疑問に思うのは私だけでしょうか
そしてこの子連れ出勤は「お父さん」でなく「お母さん」がすることが前提というのもどうかと思うのですが。
どちらにしてもこの「子連れ出勤」発言をきっかけにして少子化時代の職場での福利厚生や家族のあり方などについて色々な議論が高まり選択肢が広まるならいいことだと思います。