あなたは業務時間外に仕事メールを受け取ったことがありますか? 家でくつろいでいる時や休暇中の仕事メール、だんだんと疲れてきませんか? 今日は勤務時間外の「オン」と「オフ」をどのように切り替えればいいのか、そして現在、少しずつ始まっている「つながらない権利」への取り組みについて考えてみたいと思います。

絵日記:強制はされていないけれど

便利な世の中になりました。
スマートフォンを持っていると
どこでも誰とでもすぐにコミュニケーションが
取れます。

アメリカの職場ではひとりひとり仕事用のスマートフォンが支給されました。「はい、どーぞ」「ヤッホー」

この小さな板がこんなにも
私の神経を逆なでするとは
この時は思ってもみませんでした。

夜10時 夫と楽しくテレビを見ていると上司からメール みんな反応し返事をし始めます。

メールのひと山を終えて
お風呂に入ってベッドに飛び込んだのですが

夜12時 取り引き先からメール 「いつまで起きとねん」と思いながら無視しておくこともできずメールに返事をします。

さらに

週末 夫とレストランでランチをしていたら4

ピーンと着信音
同僚からメールです。

ピーン、ピーン、ピーン
同僚のメールに反応して
他の同僚も返事し始めます。

「みんな週末にやることないんかい」「週末くらいほっておいて〜」

かといって
無視しておくわけにもいかず返事します。

みんなもきっと思っているはず「かーこ、週末に他にやることないんかい」「週末くらいメール送んないでよ」

そう
みんな被害者でみんな加害者

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フランスの職場ではメールの返事、ひどい時は1週間くらいほっておいても大丈夫な感じだったのだけれど、アメリカの職場環境は時間が命。遅くとも24時間以内には返事を、でもえらい人からや大切な取引先からなら遅くとも1時間以内の勢いでした。

しかも私の職場はなんとなく勤務外も週末も休暇中もいつも仕事の事を考えていますよ、携帯は片時も離しませんっていうのが常識

なんか歯止めがかからない感じで、みんなやめたいのに誰もがやめられない感じ。いや、もちろんやめてもいいんですよ。誰かが強制しているわけではないのだから。でも評価をする・されるの世界で自分だけのんびりしているのは、そっちの方がストレスになっていました、その当時は。

それに返事をしないといけないことを返事ないままでほっておくのは、頭のどこかに何かが引っかかっていてのんびりもできません。

オンとオフの切り替えをするためにできること

「オン」と「オフ」ってどういうこと?

アメリカの職場は情報管理がとても厳しかったので、職場のコンピュータで作成している書類を自宅のコンピュータへ持って帰ったりメールで送ったりすることができませんでした。

また紙媒体でも持ち出しできない書類もあり、自宅でできる仕事はそこそこ限られていました。

それでも職場支給のスマートフォンを持たされていて、これで勤務時間外、休日、休暇中にEメールがチェックできるようになっていて、すぐに返事することが期待されていました。

フランスの職場では仕事は持ち帰りたい分だけ家へ持ち帰ることができたのでかなり家で仕事をしました。

特に職場ではあまりにバタバタしていて落ち着いてできない仕事で、でも落ち着いてじっくりとやった方がいい仕事を家に持ち帰ってやっていました。

しかしメールのチェックはというと自宅の私物のコンピューターを使って面倒くさい手順でネットワークに入らないといけなかったので、長い出張中や休暇中でない限りあまり誰も使っていませんでした。誰もがスマートフォンを持つ前の時代のお話です。

家に仕事を持ち帰るよりキツいメール攻撃

どちらが精神的にキツかったかというとアメリカ方式。実際の家での作業量は少ないのですが、絶えず携帯が気になり気持ちが休まらない感じです。

また一度メールを読んでしまうと頭が仕事モードになっていろいろと翌日や翌週の手順を考え始めてしまうことにもなります。そうなると家でも仕事のことが頭から離れなくなります。

夜、寝る前に仕事のメールに対応すると、夢の中でも仕事をするようになりおちおち寝てもいられません。

家に仕事を持って帰るのは自分の意思でどうにもなるし家での時間の使い方もコントロールできます。でもメールは四六時中、気が休まりません。

仕事のことを考えている時間はいつも「オン」

「オン」とは仕事をしているしていないにかかわらず仕事のことを考えている時間、「オフ」とは仕事のことを考えていない時間 

休息をとるには全く仕事から切り離された時間が必要で、そのためにはこの「オン」と「オフ」の時間をうまく作り出す必要があるのです。

もちろん、自宅へ全く仕事を持ち帰らず、メールもいっさいチェックしなくてよい環境ならこんな悩みもないのです。

ただ今の社会状況で働く人すべてがこのような環境で働くことができるかというととても難しいのではないでしょうか。緊急で対応したいといけないこともあるだろうし、残業時間を減らすために仕事を自宅に持ち帰らないといけない場合もあるかもしれません。

ではこんな状態でどうやってうまく「オン」と「オフ」の切り替えをすればいいのでしょう?

ちなみに便宜上「アメリカの職場」「フランスの職場」としていますが、これはたまたま私が働いていた職場がそうだったというだけで、「アメリカの職場」「フランスの職場」がそうだというわけではまったくないのでご注意お願いしますね。

対策その1:時間を決める

自分のリズムで携帯の着信音を切る時間を決める

まず職場から支給されているスマートフォンの着信音を切るかスマートフォンの電源を切ってしまい、メールをチェックする時間を決めてしまいましょう。

もちろん仕事の内容や状況によってその頻度は人によって様々。休暇中、一週間に一回、また一日1回、また週末2時間に1回でもいいのです。

そしてこの決まった時間以外はスマートフォンに触らない。

そうすると、メールの「ピーン」という音が鳴る度にスマートフォンをチェックするという状況を回避することができます。

ダラダラと自宅で仕事をしない

また自宅で仕事をしないといけない場合にも、週末なら土曜日は一日中仕事をするけれど日曜日は仕事をしない、または週の3日は帰宅後、家で仕事をするが残りはしないなど意識的に「オン」と「オフ」を設定するのはどうでしょう。

また、今週末は緊急な「この仕事」しかしないと家へ仕事を持って帰るときに決めてしまうという手もあります。忙しい時に何も決めずに自宅で仕事をしてしまうとやめ時を逃してしまいます。

もちろん実行するのは難しいかもしれませんが自分の中でルールを決めて無理矢理それにあわせていくのがいいように思います。

それが無理なら自分に「オン」「オフ」を言い聞かせる

さらにそれが無理な場合、意識的に「今はオンの時間」「今はオフの時間」と言い聞かせて、オフの時間を意識するようにするのはいかがでしょうか。

一日中、仕事をしていてもご飯の時間の前には「今からオフの時間」と口にだして意識を切り替える努力をしてみるといいかもしれません。

またお風呂にゆっくり入って「今はオフ」と言いきかすのもいいかもしれません。こうしてささやかな「オン」と「オフ」を意識して生活していると、うまく「オフ」の時間を作り出すコツがわかってくるかとも思います。

対策2:場所を変える

もう思い切って自宅では仕事のことはいっさいしないし、考えないと決めてしまいます。

そしてもし勤務時間外に仕事をしないといけないのであれば、残業をする、早朝に出勤する、週末でも出勤する、あるいはカフェやファミレスで仕事をすることに決めてしまいます。

またスマートフォンに送られるメールも対応する場所を決めてしまいましょう。できればあまり長居ができないベランダやトイレ、キッチンなどがいいかもしれません。

もちろん例外的に対応しないといけない事もあるかもしれませんが、「これは例外」と言い聞かせ、自宅のリビングや寝室は「仕事をしない場所」にしてしまいましょう。

対策3:先延ばしにする

簡単な返事だけをして問題の根本には触らない

求められている返事や仕事はすぐにはできませんと宣言してしまう方法です。

例えば週末にメールをチェックするといくつか今すぐ対応したいメールがあります。

ここで時間のかかる神経を使う長い返事を書かずに「月曜日に出社次第、返事をします」と返事をするのはいかがでしょう。

また「今、メールが出来る状況にないので、後ほどきちんとお返事させていただきます」一行、送ってしまいます。

誠意のあるでも曖昧な返事を

この返事、あいまいならあいまいなほうがいいです。「何日の何時まで」なんて約束してしまうとそれがまたプレッシャーになるので「出来る限りはやく」なんて言葉で言葉を濁すといいのかもしれません。もしそれが可能なら。

この「先延ばしメッセージ」、とても簡単に返事が書けるし返事をした気分にもなります。

また、誠意のあるメールなら短い返事でも相手も忘れられている感じがなく返事をすこし待つ体勢になります、よほど緊急なものでなければ。

そして勤務時間が始まってからこれらのメールの対応をするといいかもしれません。

対策4:割り切る

すぐに返信しないことで起こる不利益や時間外に仕事をしなかったことで起こるトラブルを割り切って受け入れるというウルトラCもあります。

真面目で仕事熱心な方にはとても受け入れがたい提案で、実際問題、これを実行するにはとても勇気がいります。

仕事が間に合わない事で起こるトラブルや上司からの低評価を考えると、勤務時間外に仕事をしたほうがいいやとなりますが、案外なんとかなることもあったり、自分が思うほど緊急でなかったりもします。

本当に今自分がやらないといけない仕事がどうかを考えて、あんまり実害がなさそうなものは「遅れてもよし」と割り切りましょう。

勤務時間外メール禁止はどうなの?

勤務時間外にメールをチェックするかしないかはもちろん基本的には個人の選択です。しかし社内も社外もなかなかの競争社会。抜け駆けをしたいのは世の常です。

関係者全員が勤務時間外にメールをチェックすることを止めない限り、週末だろうが休暇中だろうがそこそこの頻度でメールをチェックして返信してしまう状況に追い込まれます。

もしくは完全に「つながらない」状況におかれるか。私の同僚が1週間クルーズの旅にでかけて携帯もインターネットの完全にオフラインになったことがありました。彼女曰く「いままでで一番しあわせな旅だった」そうです。

ということで世界的に徐々に勤務時間外に「オフライン」になる権利について議論が始まってきています。

フランスの場合

フランスの2016年の調査では37パーセントの人が勤務時間外に仕事関係のデジタル機器を使っているそうです。

労働者の権利にとても厳しいフランス。2016年8月に議会を通過したLoi El Khomriという法律に「つながらない権利(Droit à la déconnexion)」が明記され、2017年1月1日に発効しました。

この法律によると従業員50人以上の企業の雇用主は従業員の休息や休日の時間を、そしてプライベートとプロフェッショナルの時間のバランスを守る必要があります。

そのために雇用主は従業員の「つながらない権利」を守るための行動規範を策定することが義務づけらました。

この法律を守らなかった時の罰則については設定されていませんが、法律として勤務時間外にデジタル機器を使って仕事をしない権利を明文化されたことは大きな一歩です。

アメリカの場合

今年のおおきなニュースは2018年3月に「つながらない権利法案(right to disconnect bill)」がニューヨーク市議会に提出されたこと。現在、まだ協議中ですが期待は高まります。

この法案では従業員10人以上の民間企業の雇用主が、従業員に勤務時間外にデジタル機器でのコミュニケーション(Eメールやショートメッセージ)を強要することを禁止しています。

また雇用主はこの法が発効してから30日以内に従業員にこの「つながらない権利」を書面にして通知しないといけないそうです。

もしこの規則に違反すれば一回ごとに250ドルの罰金、またこの規則に従った従業員を罰した場合には500ドルの罰金、もしこの従業員が失職を余儀なくされたときには罰金は2500ドルにまでなると規定しています。

本当に勤務時間外メール禁止は可能?

「強要してはならない」って効果があるの?

個人的な考えはフランスのやり方で各企業がきっちりとした行動規範をつくるなら、それなりに効果はあるのかなと思っています。

アメリカのやり方は「強要してはならない」というのが少しひっかかっています。

なぜならこれまでアメリカの職場でものすごい量のEメールを勤務時間外に受け取ったり送ったりしていますが、雇用主に強要されたのかというと答えは「いいえ」

しかし上司やそのまた上の上司、さらに大切な取引先からのメールが勤務時間外に届いて、それを目にしてしまって返答しないでいられる強者がいったいどのくらいいるのでしょう。

というより返事をしないことのほうがストレスになりそうです。

勤務時間外にメールを見ないストレスもある

勤務時間外メールは禁止はストレス軽減のために始まったのだと思います。しかし勤務時間外にメールを見ないストレスというものもあります。

例えばフランスの職場で働いているころは休暇中は3日に1回程度しかEメールを見ませんでした。

しかしこのEメールを開けるときの恐怖ったら、、、何百というメッセージがたまっていて、緊急メール以外は開けず返事もしないで先送りにしていたのですが、休暇明けにこれを一つずつ読んで処理しないとと思うとクラクラしました。

またメールを絶えずチェックしていないとすごい早さで変わって行く仕事の流れについていけないというのもあります。

いったい私が休んでいる間に何が起こっているのだろう?という漠然とした不安がつきまとうことになります。

また同僚が気をつかってEメールコミュニケーションの輪から休み中の間はずしてくれたりすると、職場に戻ってからますます何がどうなっているのか分からなくなっていることもあります。
 
メールを見てもメールを見なくても精神的安定が得られるのかどうかは微妙なところだと思ったりします。

包括的なルール作りを

さらに意図的にサーバーを停止させて勤務時間外のコミュニケーションを禁止するとセキュリティの問題が発生するかもしれません。

どうしても連絡をとりたいときはどうしても連絡をとりたいのです。安全が保証されないプライベートメールにメッセージを送っても、同僚の夫の携帯電話に電話をしても、、、

もし勤務時間外メールを禁止にするならば、ただ単に禁止するだけでなく各企業で包括的なルール作りをする必要があるのかもしれません。

ちなみに私が仕事勤めを辞めて最初に感じた幸福は、頻繁に鳴るスマートフォンのEメールの着信音が止まったことでした。