アメリカでお医者さんにかかるとよく「リファラル(referral)」という単語に出くわします。私は最初の頃全く意味がわかりませんでした。今日は「HMO」「PPO」といったアメリカの基本的な医療保険システムに加えてアメリカ軍の医療保険での私の経験をご紹介したいと思います。
アメリカで専門医にかかりたいと思ったら
どうしましょう。

日本ならそのまますぐに
専門医のクリニックへ出かければいいけれど
 
こちらではまずホームドクターに
診てもらわなければなりません。
 
ということで出かけたクリニック 「五十肩だと思うんですけど」「多分そうですよ アメリカではfrozen shoulder(凍った肩)っていうんですよ」

そして

理学療法を20回受けられるようリファラル(referral)しておきますねとのこと

さてリファラルとは何でしょう?

リファラルとはホームドクターから専門医へ紹介してもらうことで、これがないと専門医へ行っても保険が効かないかもしれないのです。

でも

「紹介」っていっても先生が病院を選んでくれるわけではありません。クリニック御用達のお医者さんリストをくれるのでそのリストを元に保険会社のウエブページで保険が使える病院を探して選ぶのです。

そして選んだ理学療法クリニックに
予約を入れ

やっとうけることができました。30分の運動と30分のマッサージを担当の理学療法士から

さて
このアメリカのリファラルシステム
最初、全くわかりませんでした。

アメリカへやってきた頃「ではリファラル出しておくので明日以降、このトライケアへ電話してくださいね」

先生、あなたは英語を話して
いらっしゃるのでしょうか? 

全く、何のことかわかりません

はぁ?

って感じです。

ここで出るいつもの弱虫な私 「オッケー そうします」 いいカッコをして答えましたが何がどうなっているのかさっぱり

アメリカ生活で大切なこと

「分からないことは分からないと
はっきり言いましょう」

私はできなかったけど


Bar-border-F

実際は先生に少し聞いたのですが、それでもさっぱり分からずあきらめて「知ったかぶり」をして帰ってきました。

今になって思えば先生も「リファラル」が分からない人がいるということに想像が及ばなかったのでしょう。それほどアメリカの病院でよく出てくる単語「リファラル」

その後、家に帰って夫に説明してもらっても飲み込むのに時間がかかりました。というのも日本の病院の「紹介状」というものとは少し違うので。

それではこれまでの私の「リファラル」経験をご紹介しながらアメリカの医療保険について少し説明したいと思います。

 アメリカの2つの医療保険システム:PPO/HMO

まず細かい話に入る前に最初にアメリカの医療保険の根本的な考え方「PPO」と「HMO」について説明させてください。

HMO(Health Maintenance Organization)

あえて無理やり訳すると「健康を維持するための医療保険サービス」でその名の通り、病気の予防に主観が置かれています。

このHMOの大きな特徴は主治医(Primary Care Physician: PCP)を決めること。

絵日記では話を簡単にするために「ホームドクター」と書きましたが同じ人を指しています。

この主治医、専門医ではなく感覚的には日本の近所にある小さなクリニックで何でもみてくれるお医者さんの感じです。

救急車を呼ぶような緊急事態ではない限り、まずこの先生にみてもらってその後この先生が必要と認めて初めて専門医にみてもらうことができます。
 

PPO(Preferred Provider Organization)

これまたあえて無理やり訳すると「より好ましい医療提供者を利用するための医療保険サービス」

HMOとの根本的な違いは主治医を決める必要がなく、なのでリファラルが必要ないこと。

自分が加入している保険のネットワークに参加しているお医者さんや病院なら、専門医であっても自由に選んでそこへ出かけて診てもらうことができます。

ではPPOの方がいいんじゃないのと思われるかもしれませんが、このPPOの弱点は保険料がHMOよりも割高になってしまうこと。

 アメリカの軍人が利用する健康保険:トライケア

さてこの「HMO」と「PPO」の基礎知識を元に私が利用している保険のお話をしたいのですが、私の夫は元アメリカ軍人、今は退役軍人です。なのでアメリカの軍人用に用意された健康保険に加入しています。

いったい、この情報どこに需要があるんだとも思うのですが、HMOとPPRの違いを具体的に表すためにもこのアメリカ軍の健康保険について少し説明したいと思います。

Tricare Prime

アメリカ軍が利用している健康保険はトライケア(Tricare)と呼ばれるのですがこの中で一般的なHMOタイプの保険がトライケア・プライムと呼ばれています。

現役軍人は全てこのプランを利用し一年間の保険料は全くかからず、また医療機関の診察にも料金はかかりません。

ただ基本的には軍の医療施設で診てもらわないといけないという制限があり、その医療機関のお医者さんが主治医となります。

引退をして現役軍人から退役軍人になると、もちろん保険料を支払わないといけなくなります。家族プランで一年の保険料を594ドル(約6万5千円)くらいかかります。

またネットワークに参加しているお医者さんにかかると1回の診療で一般医で20ドル(約2200円)専門医で30ドル(約3300円)、クリニックで自分で支払わないといけません。

また入院すると入院費として154ドルかかります。それ以上の費用は基本的には保険でカバーされるというシステムです。

さらに退役軍人の場合、特定の地域では「US Family Health Plan」という特別な対応を受けることができて、これはトライケア・プライムの条件よりほんの少し好条件で軍の医療機関ではなく一般の医療機関で診てもらうことができます。

例えば私の住むワシントンDCやメリーランド州ではJohn Hopkins Medicine というジョン・ホプキンス大学が提供する医療ネットワークに加入することができます。

ちなみに現役軍人本人は無理ですが現役軍人の家族は希望すれば「US Family Health Plan」を利用することができます。

Tricare Select

このトライケア・セレクトはトライケアのPPOタイプの保険で現役軍人は利用できませんが、現役軍人の家族、そして退役軍人とその家族が利用することができます。

一年に594ドルを支払わないといけないトライケア・プライムと異なり一年間の保険料は全くかかりません。しかしこの保険にはプライムにはなかった「deductibles(年間自己負担額)」というものがあります。

この年間自己負担額、家族プランで300ドル、ということは一年で約3万3千円、自分のポケットから支払ったあとで初めて保険のシステムが起動するということ。

またこの年間自己負担額を越えたあとはネットワークに参加しているお医者さんにかかると1回の診療で一般医で29ドル(約3200円)専門医で41ドル(約4500円)自分で支払わないといけません。

ということは一回の診察にかかる費用が「プライム」よりも高額になるということです。

さらに入院をすると1日に250ドル、もしくは請求額の20〜25パーセントを支払う必要があります。

ただしこの「セレクト」はもちろんこの保険はPPOなので主治医を決めなくてもいいしリファラルも必要ではないので「プライム」より簡単に専門医にかかることができます。

トライケアーHMOとPPOの違い

ということでアメリカ軍の保険トライケアのHMOとPPOを本当にとてもざっくりと比較してみると

  • HMOは主治医を決め、主治医の紹介をもらって専門医に診てもらう。
  • PPOはネットワークに加盟している病院や先生を自由に選べる。
  • PPOは年間の保険料がかからないが年間自己負担額がある。
  • HMOは年間の保険料は支払わないといけないが年間自己負担額はない。
  • 一回の診療や入院でかかる費用はHMOに比べてPPOの方が高くなることが多い。

もちろんこれはトライケアのネットワークに参加している病院にかかる場合についての大まかな話です。なのでトライケアのネットワークに参加していない病院で診てもらう場合などにはさらにここには書いていないとても細かい決まりがあることをご了承ください。

またトライケアは細かい情報をウエブでみることができるので最新の細かい情報が必要な方はウエブでご確認くださいね。
https://www.tricare.mil/

ただこのトライケアの例を通してなんとなくHMOとPPOの違いを感じていただくことができればうれしいです。

 トライケアを使った私のリファラル経験

夫が現役軍人で夫婦でトライケア・プライムを使っていた時代

専門医にかかりたかった私。トライケア・プライムはHMO、ということでアメリカ軍の病院へ出かけました。

ここで決められた主治医に診てもらい絵日記のように「リファラルを出しておくので2〜3日後にここへ電話して」と電話番号をもらいました。

今考えてみるとトライケアの事務所の電話番号だと思います。この軍の医療機関ではビタミン剤も一緒にもらいましたが全く支払いをする必要はありませんでした。

後日、もらった電話をしてみると「決定事項を郵送しますので受け取ってください」と言われました。

その後、手紙が届き「この専門医へ行ってください」と医療機関の名前が一つ書かれていました。もしセカンドオピニオンのために別の病院にかかりたいなら改めて別の手続きが必要なようでした。

その後、指定された専門医へ出かけましたが、診察には費用がかかりませんでしたが、その後の高度治療は保険が効かなかったので全額自費で払いました。

ただ薬代に関しては病院からは「保険効きませんよ」と言われていたのですが、ダメ元でトライケアに提出してみると全てカバーされました。

病院のことをそのまま鵜呑みにしてはいけないというのはこの経験で学びました。

途上国赴任中にトライケア・オーバーシーを使っていた時期

今回はHMOとPPOに焦点を当てていたのでトライケア・プライムとトライケア・セレクトしか説明しませんでしたが、トライケアにはそれ以外にもいろいろな種類があります。

海外に赴任する現役軍人と夫の任務命令書に記載のある家族はトライケア・プライム・オーバーシーを利用することができます。

途上国で専門医にかかる必要ができた私、しかしその途上国にはアメリカ軍の病院がなかったので現地の同僚に相談して病院を探しました。

そしてトライケアの事務所に「この病院で診てもらいたいのですが」と連絡をすると、その病院をトライケアのネットワークの病院として認定してくれました。

認定されたことを確認した後、病院で診察を受けかかった診療費を自分で支払い、その後領収書をトライケアに送ると全額返金してくれました。

しかし地元の病院では「問題ない」と言われたのですが症状がひどくなり再度トライケアに相談をしたら、私の途上国ではきっちりと診断できる病院がないという判断で、アメリカの軍の病院で診察を受けることになり、診察代のみならずそれにかかる飛行機やホテル代も全て支払ってくれました。

夫が退役軍人となりプライムの「US Family Health Plan」に加入した場合

US Family Health Planに加入したのでJohn Hopkins Medicineの民間の病院ネットワークを使うことになり、軍の病院はよほどのことがない限り利用できなくなりました。

ネットワークの中で家に近いクリニックを選びそこの先生が主治医に。

そしてまずはこの主治医の先生を訪れて五十肩という診断をしてもらい、この先生からリファラルを出してもらって専門医(理学療法士)に診てもらうことになりました。

ここでは理学療法士に提出するリファラルの用紙と一緒にこのクリニックがオススメする理学療法士の一覧をもらいました。

そして絵日記のように、そのリストに並ぶ病院の中から病院を選び、その病院がJohn Hopkins Medicineのネットワークに加入していることをウエブで確認して予約をして出かけました。

そして主治医の先生に20ドル、専門医の先生に30ドル、訪問ごとに支払っています。

ちなみに夫が引退した後、高額の歯医者さんとコンタクトレンズ関係などの眼科のために、このトライケアに加えて歯科と眼科の保険をそれぞれ別に購入しています。


さて長々と書いてきましたがアメリカの医療保険は本当にややこしいですし情報もコロコロ変わります。もちろんウエブで情報収集するのも大切ですが、周りの友人や同僚のみなさんがどんな保険を使っているのかも聞いてみるのもいいと思います。

さらにご自身の家族構成や病歴なども考えてあなたの家族に最適なものが見つかるようお祈りしています。

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