英語でもフランス語でも「愛しい人」を呼びかける表現がたくさんあります。日本でも有名なところでは「ハニー」や「ダーリン」。フランス語だと「マシェリ」というシャンプーもありますよね。もちろん「愛情」があるからこの言葉を使うのでしょうが、愛情がなくてもこの言葉を使うことも。今日はこの「愛しい人」の使い方についていろいろと考えてみたいと思います。

絵日記:もう「愛しい人」と呼んでくれないの?

日本生まれで日本育ちの私
日常で「ハニー」や「ダーリン」なんて
恥ずかしくて使えません。

でも夫をたまに「愛しい人」と呼ぶことが
あるのですが

数ある英語の「愛しい人」表現の中から私が使うのはほぼこの2択 my dear!  my love! ちなみにネコたちにも me? 私? 僕?

夫いわく、私のこの呼び方は時代がかっていると

たしかにこの前、中世が舞台の映画を見ていたら
「my love(愛しい人)」
「my dear(親愛なる人)」が
度々使われていました。

そもそも私のこのくせ

昔の職場の上司が「Oh, my dear これ、やっておいて」「My love ありがとう」と連発していたのが自然にうつってしまったのです。

もともとフランス語が母国語のこの上司
フランス語でも
「ma chère」や「ma chérie」といった
「愛しい人」をよく使っていたのだけれど

英語になってもこれらの言葉を訳して
「my dear」「my love」を使っていた模様

これがすっかりうつってしまったわたし
夫にも使うけれど

その後の職場で
アメリカ人の同僚相手にも飛び出していました。

「どうもありがとう my dear」 「それはどうなのよ my love」

では、ここで考えてみましょう
私の上司が本当に私のことを
「愛しい人」と思っていたのでしょうか

そして私は同僚を「愛しい人」と
思っていたのでしょうか?

答えは「NO!」まあ、親近感は感じていたけれど

じゃあ、どうして
「愛しい人」を使っていたのかって?

いろいろと思い返してみると「面倒くさいこと頼んだけれどよろしくね」「こんなこと言ったけど許してね」って感じで使ってました。

まあ、「場を和ませるため」
ってところでしょうか

ちなみに夫は新婚の頃
私に「ベイビー」と呼びかけていましたが
ここ5年ほど、聞いた事がありません。

 「ベイビー」と呼ぶのには私が年をとりすぎていることに気がついたのでしょうか? それとも「愛しい人」というのさえも面倒くさくなったのでしょうか?

「ときおりは 愛しい人と 呼んでよね
口にはだせぬ 結婚9年目」

短歌風にまとめてみましたが
いかがでしょう?

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「愛しい人」の呼びかけは「好き」ってことじゃないから

付き合いはじめた最初の頃や新婚当初は「愛しい人」とよばれると、それだけでうれしくなったりドキドキしたりしたものです。

しかしそんな気分を味わえるのも最初のうちだけ、というのも「ダーリン」や「ハニー」が日常の中で度々登場すると、もうそれは単なる呼びかけやニックネームになってくるからです。

ではこの「愛しい人」、日常のどんな場面でよく登場するのでしょうか。

単なる呼びかけやリズム作り

まずよく使われるシチュエーションは「ねえ、ちょっと」と相手の注意を引きたいとき。

日本では直接、相手の名前を呼んだり、また子どもがいればパートナーに「お父さん」や「お母さん」と呼びかけたりするそんな場面です。

英語ではその代わりに「ハニー」や「スィーティ」が登場しますがそこには何の甘さもないと思っていいでしょう。単なる呼びかけです。

また、私はたまに話している最中に「マイ・ディア」を差し挟みますが、夫に「あなたは私の愛しい人ですよ」と語りかけているよりは、会話のリズム取りに使っていることに最近、気がつきました。

なんだか文章がしっくりと終わらないときに、「マイ・ディア」をつけて終わらせています。

何かを頼むときにも「愛しい人」

パートナーに何かを頼むときにも「愛しい人」をよく使います。例えば私は「このゴミ捨てておいてくれる、マイ・ディア」と夫に使いますし、「ハニー派」の義妹も「ハニー、XXXしてくれる?」と義弟に使っていました。

さらに私は同僚にもよく使うし使われます。同僚が「ヘイ・スィーティ」とやってくると「おっ、頼みごとか」といった感じです。

この「愛しい人」には「悪いわね」「ごめんだけど」といったニュアンスが含まれているのかと思います。

言いにくいことを言った後に

「お願いごと」からさらに派生して苦情や文句など言いにくいことを言った後に、場を和ませるために「愛しい人」を差し挟むことがあります。

「靴下は洗濯かごに入れってっていったじゃないの、ハニー」、「今日は早く帰ってくるって言ってたじゃないの、スィーティ」、「ヘイ、ダーリン、昨日頼んだ書類まだ出来ていないの」と言った感じです。

文句を言っているけれど、あなたを個人的に攻撃しているわけではないのといった感じだと思います。

このあたりになると「愛しい人」的なニュアンスは完全に吹き飛んできて、強いことを言ってるけど悪く取らないでねって感じでしょうか。

怒っているときに怒りを和らげるために

さらにすごく怒っている時やあきれている時も「愛しい人」を使います。

子どもをしかるときを考えてもらえると分かりやすいのですが「やめなさい!」としかった後におまけで「ハニー」なんてつけたりします。

また鍵を部屋に置き忘れてオートロックを閉めたときなんかのやるせない怒りを相手にぶつけるときも「オー・ベイビー」なんてことになります。

私は夫に怒っているときには「愛しい人」と呼びかける心の広さはありませんが、職場で言い争いになったときなどには「ちょっと落ち着こうよ、マイ・ディア」と言ったりしてました。

この「愛しい人」は「あなたにものすごく腹をたてているけれど、これは一時のことであなたを敵と見なした訳ではない」といったメッセージを送りつつ、自分の怒りをなだめているといったところでしょうか。

最後に、職場での「愛しい人」の使い方ですが、目下から目上へはよほど親しくない限り使いません。また女性同士では呼びかけなんかにも使うけれど、「男性」から「女性」へは使わない方がいいように思います。馬鹿にされているように感じる方もいらっしゃるので。

自分なりの「愛しい人」への呼びかけをー英語とフランス語で

英語で考える呼びかけ

「甘いもの」でどんどん呼びかけてみよう

英語での呼びかけ方はいろいろとありますが、とても多いのは「甘いもの」を使った呼び方。ざっと思いつくだけでも「蜂蜜(honey)」「砂糖(suger)」「甘いもの (sweetie)」「パンプキン(pampkin)」など。

さらにや「甘いパイ(sweetie pie)」「カップケーキ(cupcake)」といった甘いお菓子の呼びかけもあります。

もちろん紹介したような一般によく使われているもののなかでしっくりくるものを使ってよびかけても良いのですが、「甘いもの」からヒントを得てパートナーへの独自の呼びかけを探ってみるのも良いかもしれません。

アイスクリームからクッキー、クリームパフにチョコレート、果物でも甘いイチゴや桃も使えるかもしれません。さらに「lovely」や「cutie」をつけると良いのかもしれませんが、そうすると長すぎて言いにくいでしょうか。

私も夫にお願いごとをするときには「my lovely chocolate ice cream」とでも言ってみましょうか。

「雰囲気」を意識して呼びかけてみよう

私のこれまでの経験や感覚がすこしずれていたら申し訳ないのですが、英語の呼びかけには固有の「雰囲気」があるように思います。

例えば一般的にとてもよく使われる「honey」や「baby」もその短縮版「hon/hun」や「babe」、さらに「babe」の短縮形「 bae」になると若者感、カジュアル感が増してきます。

逆に「darling」や「sweetheart」 はクラシックで少し格調高い感じがしますし、私が使う「my dear」「 my love 」だとさらに少し時代がかっている感じがしてきます。

また「beautiful」や「gorgeous」「charming」「handsome」といった呼びかけは、そこそこ小綺麗にしているときでないと言う方も言われる方も抵抗があると思うのは私だけでしょうか。 

呼びかけは慣れなのであまり考えずに無意識のうちに飛び出しているのですが、状況や雰囲気によって使い分けてみてもいいかもしれません。

大きく頼りがいのあるパートナーなら「bear」もいいかもしれませんし、なにか助けてくれたなら「hero」も使えます。

また私はネコたちに「lovely」と「cutie」を連発していますが、これはネコがかわいくてたまらない親バカの心からの叫びです。

夫が私に「baby」や「babe」と呼びかけなくなったのも私の雰囲気に可愛げがなくなったからかもしれません。

フランス語で考える呼びかけ

好きな動物を使って呼びかけてみよう

フランス語の呼びかけは本当に多くの動物が登場します。

私が昔フランスで生活し始めた頃、「ma puce(私のノミ)」とよく呼ばれていましたが、徐々に「ma crevette(エビ)」「mon poussin(ヒヨコ)」「ma gazelle(鹿みたいな動物)に変化して私も大きくなったものだと思ったものです。

さらに「mon lapin(ウサギ)」「mon chat(ネコ)」、「mon cochon(ブタ)」に「ma cocotte(雌鶏)」と動物のオンパレードです。

なのでパートナーの雰囲気や好きな動物を使って呼び名を考えてみるのも面白いかもしれません。例えば夫は大きいので「mon ours(クマ)」といったところでしょうか。

ただフランス語で「犬」を表す単語「chein」は悪い意味でよく使われるのでご注意を。例えば「il est chien」というと「彼はいじわるだ」という意味なので。

「呼びかけ」でフランス語の練習を

私の個人的趣味で申し訳ないのですが、私は最後に「r」で締めくくるフランス語の呼びかけが甘ったるくて好きです。

「mon amour(愛)」「mon cœur(心臓)」「mon cher・ ma chère(大切な人) 」「ma trésor(宝物) 」といった呼びかけなのですが、あえてカタカナで書いてみると「アムール」「クール」「シェール」「トレゾール」と「ル」の前が伸びているのにお気づきでしょうか。

この「伸ばし」の部分と最後の「r」の締めが甘い感じを作っているのだと思うのですが、この呼びかけ、日本語を母国語とする人にとってはまったくもって「甘い」ものではありません。

というのも、どれもとても発音が難しい単語だからです。

まず、フランス語学習者を苦しめる「r」の発音。さらに「trésor」の「tr」も至難の業ですし、「cœur」に至っては日本語にはない発音なのでうまく発音しないと「首(cou)」や「お尻(cul)」と混乱する難易度がとても高い単語です。

カタカナ読みの「アムール」「クール」「シェール」「トレゾール」ではまず、だれにも理解されないこれらの単語を使って、敢えてパートナーに呼びかけてみるのはいかがでしょう。

最初は難しいですがだんだん慣れてくるかもしれません。また相手がフランス人ならば気がむいたときに発音を直してくれるかもしれません。

フランス語学習のなかでこの甘い「呼びかけ」を敢えて使ってみて日々練習してみるのもいいかもしれませんね。

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たかが「呼びかけ」、されど「呼びかけ」です。ちょっとした言葉が生活の潤滑油になるなら使ってみるのもいいかもしれません。

どちらにしても英語やフランス語圏で暮らしていたり、洋画をよく見ていたりすると、いろいろな呼び方が自然に耳に入って来ます。

そんなことをしばらく続けていくと、知らないうちに自分の口から「親愛な人」が飛び出していてビックリすることになります。

私ははやく「my dear」「my love」を卒業して別の呼び方も試してみたいのですが、一度ついた口癖をやめるのはなかなか難しいので当分はこのままかな。