パリの建物は時代を感じさせる美しい石造りのものが多いですが、それは同時に古い建物だということ。内装はリフォームされていてもその建物の水道管はどうでしょう。パリで頻繁に起こる水漏れのトラブルについて、また住宅保険について私の経験を紹介したいと思います。
フランスでアパートを借りて
生活をしていたころのお話です。

朝起きて仕事へ出かける用意をしていると「ポツ・ポツ・ポツ」と雨の振る音がどこからともなく聞こえてきます

しかし外を見ても雨が降っている気配はないし
この音はいったいどこからと探してみましたが
見当たりません。

まさかとは思いながら

小さいクローゼットを開けてみると
 
なんとまるで雨が降っているかのように天井から水がもれているではありませんか

人間、ありえない出来事に遭遇すると

頭の中が真っ白になってしまって

まったく動けなくなるものです。

しかし、なんとか気を取り直し
と
いうか半狂乱になりながら

クローゼットの中のものを外へ放り出し バケツやボールを探し回り
 
なんとか水を受けたものの
 
床も、クローゼットもそして私もずぶぬれで、本当に朝から踏んだりけったりです。
 
さっそく職場で同僚に
 
「ちょっと聞いてよ~ 天井から水が漏ってきてね ほんとうに大変で」

と愚痴ってみると
 
「あっ、私も何年か前にあって、本当に大変でホテルで泊まらないといけなかったのよ」「僕なんて、今のアパートで三度目の水漏れにこの前あってね~」
 
えっ、これって「フランスあるある話」なの?
ねえ、そうなの?

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そうなのです。フランスでは水漏れは日常茶飯事。周りの同僚や友人で水漏れに会っていない人を探すほうが大変なくらいなので、パリに住んで10年目に初めて水漏れを経験した私のほうが奇跡だったのでしょう。

この水漏れ騒動、日本では本当にありえない話です(ですよね?)。この話を夫にした際の反応をみても、アメリカでもありえない話なんだろうと思います。
 
でも、フランスでこの話をすると、10人のうち9人が、「あら、あなたも?」という反応をするのです。

もちろん、みんなもそれぞれに怒っているんだけど、そこに漂う雰囲気は「まあ、しかたないよね」っていう大自然を前にして人間の非力を思い知るっていうようなそんな感じなのです。

なので、私も最初はとんでもない大事件に遭遇したように大騒ぎしていたのですが、だんだん馬鹿馬鹿しくなってきて、「まあ、パリだししかたないか」とあきらめの境地に。そうです。パリに住んで10年目でやっと私もパリの洗礼を受けたということでしょうか。

フランスで水漏れーすぐやらないといけないこと

絵日記にも描いたようにフランスのアパートの水漏れは日常茶飯事です。なので賃貸アパートを借りる際には必ず住宅保険(Assurance Immobilier)に加入しましょう。

ここでは賃貸アパートで住宅保険に加入しているという状況で私が経験した水漏れ対策手順をご紹介したいと思います。もちろん手探りの対処で本来ならもっと良いやり方もあったのでしょうが、それでもなにかの参考になれば。

まずはもちろん応急処置

多くの水が上の階から漏れてきていると、私の部屋を通過してさらに私の部屋の下の階に二次被害がでるかもしれません。

自分の荷物が水漏れの被害にあわないようにすべて移動させるとともに、家の中のバケツやボール、大きな鉢、さらにタオルやブランケットなどで水が下の階へ流れるのをくいとめましょう。

すべての関係者に連絡をとる

上の階の住人

まず走って行くのは上の階です。上の階のお風呂の水があふれているなど、すぐに原因の分かるものはこれで水を止めることができます。

私の場合、上の階の住人は本当の家は南仏にあってパリの家はたまにしか利用しない人で、この日も不在でその後も1週間ほど連絡がとれずにとても困りました。

もちろんその時点ではこんなことは知らなかったので、紙に状況を説明してドアの下に差し込みました。

アパートの大家さん

次に電話をしたのが大家さん。私のこのアパートは借りた当初は大家さんが経営管理一切を不動産会社に委託していました。

その後、その費用がもったいないからということで大家さん自身が管理をすることに。

このような状況だったので大家さんに電話をしましたが、最初の状況なら管理を仕切っている不動産会社に電話したと思います。

建物の管理会社

次に連絡をしないといけないのはアパートが入っている建物全体を管理している管理会社、フランス語ではSyndicと呼ばれています。

私はこの管理会社の連絡先を全く知りませんでしたし、私はアパートの持ち主ではなく借り手。大家さんが連絡するのが筋と思い、大家さんから連絡してもらうようお願いしました。

保険会社

そして、忘れてはならない保険会社への連絡。

私が初めての水漏れで困っていると、フランス人の同僚たちが、大至急「事故報告書」の用紙を保険会社からメールで送ってもらいなさいと助言してくれました。

保険会社へ事故報告書を送る

同僚の助言により「事故報告書」の用紙をメールで送ってもらったのですが、書類を見てどうしてみんなが私を急がせたのかがわかりました。

なぜなら事後報告書に「5日以内に保険会社に送り返してください」と書かれていたから。大急ぎで報告書作成に取りかからないといけません。

私は保険会社にフォームを送ってもらいましたが、今の時代、保険会社のウェブサイトからダウンロードもできると思います。

さて、この書類、まず一見して分かるのは被害者側と加害者側、両者のサインが必要だということ。しかしこの時点で上の階の住人とも連絡がとれず加害者は誰なのかもわかりません。また被害者も大家さんなのか私なのか、、、

これまた同僚たちの「加害者は空欄でもいいのでとりあえず保険会社に送れ」という助言に従い、自分が分かる範囲で記入して提出します。

その後、家の状況を見にきた大家さんとも話し合い、私も大家さんもそれぞれ個々に自分たちの保険会社に取り急ぎ「事故報告書」を出すことに。

その後、大家さんが建物の管理会社、上の階の住人に連絡を取り、上の階のお風呂の配管が壊れていたのがこの水漏れの原因と分かり、無事、配管の修理をしてもらい水漏れはとまりました。

しかしこの段階でも「加害者」がすぐに特定できるとは限りません。実際、この場合も上の階の住人と管理会社と大家さんでだれの保険会社を使って支払いをするかもめていました。

さらに、水漏れが発覚して半年くらい経ってから、今度は私のアパートの玄関やお風呂場、リビングの天井のペンキが一気にはがれて上からドサッと落ちてくる騒ぎに。

どうやら、お風呂の配管だけでなくトイレの裏の配管も水漏れしていたようで、その水が天井に溜まり天井の湿気でペンキがどんどんとはがれ落ちているようです。

これも実際の水漏れ箇所は壁の裏にあったのですが、調べてもらうまではどこでどうなっているのかわからず、また原因が分からないとやはり誰が加害者なのか分かりません。

大家さん、管理会社の保険調査員が水道屋さんと一緒にやってきていろいろと調査をし、その度に私は職場から抜け出して家の鍵を開けて立ち会ってと大変でした。

ということで、「加害者」の特定を待たずになるだけはやく「事故報告書」を保険会社に出すようにしましょう。

自分の被害を見極める

最初の水漏れは私のクローゼットの天井から始まりました。

洋服や普段使いのものは入れていませんでしたが、アルバムなど思い出関係のものが入っていて、多くの写真がだめになりました。

しかし保険会社に聞いてみると写真といった思い出関係のものは保障してくれないとのこと。となるとクローゼットにはほぼがらくたしか入っていなかったという状況になりあきらめるより仕方がありません。

ただ、昔、とても気に入って思い切って買ったハンドメイドのシルクの絨毯があって、このアパートの色とあわないので、クローゼットにしまっていたのですが

これが水浸しになって汚れて手触りも変わってしまいました。これだけは必ず請求しようと決め、購入金額が分かるものを探しました。

押し負けない

2度目の水漏れは配管修理については私に連絡はなく、おそらく大家さんや管理会社の間で話がついたのだと思うのですが

天井からはがれてくるペンキの修理について(業者のペンキ塗り直し)、大家さんから私の保険で修理できないかと打診がありました。

すごい量のペンキがはがれて落ちてくるのを毎回掃除しないといけなくて、不快で仕方ないのですが、だからといってなにか私の所有物に被害があったわけではありません。

そしてアパートの借り手である私が、どうしてペンキのはがれの修理を私の保険でしないといけないのか分かりませんでした。

特に、この天井の問題は私の行動が原因で起こったわけではないし、私の保険会社が支払ってくれる保証はまったくありません。

ということでこの「お願い」は筋が通らないと押し戻し、結局、大家さんの保険で処理することになりました。

実は1回目の「事故報告書」を送ったあと、私の保険会社からは全く連絡がきませんでした。

それでも根気よく2ヶ月に1度程度、手紙と「事後報告書」のコピーを送って、「この件の処理、どうなっていますか」と連絡をしていました。

大家さんから天井修理の話があった後は、念のためにと思い、この催促の手紙の中に「水漏れ被害が天井にも広がりペンキが落ちています」と書き添えて送るようにしていました。

すると「事後報告書」を送って1年たったころに、突然、私の保険会社の保険調査員から電話がかかってきて、「カーペットはどのくらいの金額でしたか」と聞かれたので金額を答えると、そのままその金額のチェックが送られてきました。

保険会社はカーペットを見ることもなく写真を送って欲しいと言われることもありませんでした。

ほぼあきらめていたのに「言い値」で支払ってもらえたのは「粘り勝ち」と思ったのですが、実際のところはどうなのでしょう。

結局のところこの件で思ったのは、水漏れ被害の保険請求はケースバイケースでこれといった「正解」がないのではということ。

しかもフランス人はおおむね、交渉ごとになるとても強気です。ここで押し負けてしまうと自分だけが損をすることになってしまします。

なのでまずは自分の要求をきっちり伝えましょう。そして、大切なことはあとで言った言わないになるので、書面で連絡するようにしましょう。

普段から水漏れに備えて生活を

パリのアパートは古い建物のものが多いです。特に正面玄関や外壁の美しいものはそれだけ古い時代に建てられたということです。

内装はリフォームされてきれいになっていても、壁の中の配管やパイプは古い物が多く、いつ水が漏れるかわかりません。

なので日常の生活のなかでもできるだけ突発的な水漏れに備えるようにしてみてはいかがでしょうか。

濡れて困るものはプラスチック容器へ

今回の水漏れで痛かったのはアルバムがぬれてしまったこと。洋服や本、鞄などは最悪買い替えればいいのですが、古い写真や思い出はそうはいきません。

水にぬれて困る大切な物、書類、ハードディスクは万が一のことを考えてプラスチックやアルミの容器にいれて保存しておきましょう。

またとても大切な靴や鞄もなるだけ被害が最小限になるような場所を探して収納しましょう。

保険会社の連絡先はすぐにわかるところに

水漏れ被害があって真っ先に連絡しないといけないのは保険会社です。しかし契約後しばらく経っていると、いったいどこの保険会社と契約したのか契約書はどこにしまったのかわからなくなってしまいます(私だけでしょうか)。

また事故報告書を出すときに契約番号も必要になってくるので、こういった書類をきちんと分かるところにおいて、必要なときにすぐに取り出せるようにしておく必要があります。

私はこの出来事で反省をして保険関係の書類を整理してすぐ必要なものをすぐに取り出せるようなフォルダーにしまうようにしました。

水を止めるためのシュミレーション

パリのアパートも日本の都会のアパートと同じようにあまり隣近所との交流はありません。しかし水が上からもれてきているなら、真っ先に水を止めなければなりません。

普段から近所付き合いがあって直接、「上」の方の連絡先を知っているのならいいのですが、そうでない場合、どうすればいいのか、一度、頭の中でシュミレーションしてみましょう。

管理会社に連絡をするとおそらく上の方の連絡先を知っていると思います。もし賃貸ならば、大家さんの電話番号が携帯に登録されていますか?

また、同じ建物で協力をお願いできる人はいますか? コンシェルジュさんがいる建物ならば、時間外の連絡先を知っていますか?

さらに友人や同僚でこれまで「水漏れ」被害にあったことのある人がいれば(かなりの確率でいると思います)、ランチや世間話のついでにどのように対処したのかも聞いてみるのもいいかもしれません。

そのときはなんとなく聞いていた話でも、いざ本当に自分の身に起こるとその経験話が大きな助けになるかもしれないし、「そういえばあの人、水漏れの話していたな、ちょっと電話して聞いてみよ」ということもできます。
 
私もそうですが、水漏れや災害は自分に起こるわけがないと漠然と思いながら生活しているのではないでしょうか。しかしこういうことは起こってしまうときは起こってしまいます。そして起こってしまうとほんとうにどうしていいか分からなくて頭をかかえてしまうことになります。

なのでこの経験のあと「普段からできるだけの準備をしておかないといけないな」と身にしみて反省したのでした。実際できてるかというと、まあまあって感じですが。